墨のQ&A

Q:墨の大きさと数え方

A:墨の大きさは、1丁型(いっちょうがた)、2丁型と云って、○丁型と表示します。
これは重さを基準にしており、1丁型15g、2丁型30gとなり、10丁型は150gになります。
また、墨の数を数える単位は、丁(ちょう)で表わします。10個の墨は10丁と言います。
通常一般に使う墨は長方形をしていますが、その標準となる大きさ、厚味は次の図の通りです。

Q:よい墨の磨り方

A:硯(すずり)の表面には「鋒鋩」(ほうぼう)といって、微細なヤスリ状の凹凸があります。
墨はこの鋒鋩によって磨(す)りおろされていきます。
力を込めて磨りますと墨の粒子が荒くなり、墨のもつ本来の墨の色が出ません。
硯の面に水を数滴たらし、力をいれずにゆっくりと磨り上げ、濃くなれば海におろし、再び水をたらし、ゆっくりと磨ってゆくのが理想です。
そして最後に使う濃さに水で薄すめて下さい。
こうしますと、墨本来の生き生きとした墨の液が得られ、美しい墨の色が求められます。
またこの方がはやく濃くなるのです。

Q:墨の保存方法

A:墨は生きています。日々の気候により絶えず変化しています。
墨が最も嫌らうのは、気温の変化の激しいところ、直射日光、湿気の多いところです。
気温の変化が厳しいと、墨は耐えきれず、ヒビが入ったり、割れてしまいます。直射日光も同じです。

湿気の多いところでは、墨が水分を吸収し、膠が腐りやすくなります。
このため、墨は購入時に入っている桐の箱や紙の箱に入れ、さらに引き出しや木箱の中に入れて保管して下さい。
また墨を使った後は、磨(す)り口の水分をよく拭き取ってしまって下さい。

Q:よい墨の選び方

A:同じ材料を使った墨も、その工程のあり方によって仕上りが随分ちがってきます。
しっかりと練り込まれ、充分に乾燥され、よくねかされた墨がよい墨と言えます。購入の時、次のようなことに注目いただければと存じます。

  1. 手に持って、やゝ重量感のあるもの。よく練られ微密な墨質になっています。
  2. 墨どうし軽くたたくと金属音の出るもの。よく乾燥されています。
  3. 墨の姿が端正でしっとりとした肌合いのあるもの。墨の表面がツブツブになっていたり、練りシワがあったりするものはよくありません。

Q:和墨と唐墨とのちがい

A:和墨はもともと中国から製法が伝来し生まれた物であり、唐墨とその製法は同じであったはずですが、今日では各々独自の特色を持ち合わせるようになりました。
唐墨には唐墨の、和墨には和墨の良さがありそれぞれの特長を理解して御使用なされることをお勧めします。
唐墨は膠の力の弱いものを、和墨は膠の力の強いものを使っている為、唐墨は膠の配合量が多くなり和墨は少なくなります。
特に中国の清代の名墨といわれる墨は墨色に品があり伸び、滲みが良いものが多かったのですが、現在の唐墨は力の弱い膠を大量に使っている為、気温や気候の変化でよく割れたりします。現在の品質は和墨の方がはるかに良くなっています。

和墨 唐墨
比率 煤:膠=10:6~8 煤:膠=10:10~12
滲み 滲みが弱い 滲みが強い
硬さ 一般に唐墨より硬い 比較的柔らかい ヌルつく
伸び 伸びは唐墨に劣るが
膠力は強い
伸びのよいものが多い。
墨色 重厚味があり、力強く基線が黒々としていて素朴で強く品位と深みがある。淡墨では透明感が高い。 柔らかみがあり、やや茶味の墨色。深みは持っている。素朴さに欠ける。
寿命 安定した経過 名墨は古墨として、長い寿命を持っている。しかし、現在の唐墨は摺り口にヒビが入りやすく割れやすい。

Q:磨すった墨液の長期保存

A:墨を磨った直後のすすの粒子は微粒子となってごく薄い膠の膜につつまれ、水に浮遊しています。
しかし長時間放置しておきますとすすを包む薄い膠の膜が次第にこわれ、すすとすすがくっつきはじめ、大きな粒子になって行きます。
こうなりますと、すすは水に浮遊できず、水とすすが分離してしまいます。

この状態を宿墨(しゅくぼく)と云います。宿墨になれば、墨の色はぐんと劣り悪い汚いにじみが出ることもあります。
夏の気温の高い時は進行がはやく、7~8時間、冬は遅く1日位で宿墨が発生します。
保存するには冷蔵庫で保存しますと、膠がゼリー状に固まりますので、使う時には、湯につけてさらっとした液にもどしてから御使用下さい。

しかし宿墨はすてた方が無難です。

Q:磨った墨液と液体墨は混ぜられるの?

A:墨を磨った直後のすすの粒子は微粒子となってごく薄い膠の膜につつまれ、水に浮遊しています。
しかし長時間放置しておきますとすすを包む薄い固型墨はすすと膠を練り合せたものです。
液体墨は、膠を使用してつくるものと、膠のかわりに合成樹脂を使用してつくるものとがあり、また液体墨として長期に安定させるために薬品を添加し複雑な工程を経て生産します。
固型墨と膠を使った液体墨とを混ぜることはできますが、固型墨のもつ本来の墨の色を求めることはできません。
固型墨と合成樹脂を使った液体墨を混ぜることは、膠と合成樹脂が化学変化をおこし、凝集してしまい、墨の液として使えなくなります。

固型墨と固型墨とを磨り合わせ、新しい墨の色をつくることは差支えありませんが、固型墨と液体墨を混ぜることは、おすすめできません。