奈良の墨づくり

固形墨と液体墨

 墨の液を求めるには、墨を硯で時間をかけて磨らなければなりません。大量の墨の液を必要とする時には大変です。磨らずに使える墨液はないものかという発想が生れて当然のことです。ところが固形墨を磨って得られる墨液は、保存がきかず、一昼夜も放置しますと宿墨(しゅくぼく)(墨液の水とすすが分離した状態で、本来の墨液から変質したもの)となったり、腐敗したりして、いきいきとした働きを失ってしまいます。いつでも磨った墨液と変わらぬ液体墨を求めるには、相応の生産技術と設備が必要となってまいります。
   液体墨とは液状でそのまま使用できる書道用墨液、なめらかなねり状の墨で適度に水でうすめて使用するねり墨を言います。
 昭和33年、戦後禁止されていた習字教育が文部省教育課程の改変によって学校教育に復活されることをきっかけに、墨磨りにかける時間を短縮し、毛筆文字の学習を効果的に行なえるようにとの要望に応えて開発されました。子供達の習字にたちまちのうちに行きわたり、大人の書道にもどんどん使われるようになりました。芸術書道を志す人々からも、条幅作品や展覧会出品のための大作に使用できる高品質の液体墨の開発を求められ、液体墨生産業者は先を競って次々と新製品を世に送り出してまいりました。
 液体墨開発当初は、固形墨と変らぬ原料を用いていましたが、膠に変わる合成樹脂が開発されてからはこれを用い、より安定した品質の液体墨が生産されるようになりました。
 液体墨の技術ポイントは、墨液のいきいきとした動きを長期的に保持できる分散技術にあります。ロールミルやビーズミル等の機械装置をはじめ生産工程をへて微粒子分散された墨液は今や3年を超えて新鮮さを維持できるようになりました。
 固形墨に劣らない液体墨から固形墨をしのぐ液体墨へと研究は進んでいます。

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